オレオレ詐欺

さて、先日12月25日なんですが、うちの母が、「オレオレ詐欺」の被害にあいました。

被害にあった本人の許可ももらったので、被害状況を完全公開させていただきますが、「200万円」きっちり持っていかれました。

本当は、こんなお恥ずかしい親族の話は、そのまま闇に葬り去りたいところがあるんですが、詐欺の全貌を聞いたところ、

「これは、できるだけ多くの人が知るべき情報じゃないか」

と、判断したこともあり、思い切って書かせて頂くことにしました。

「うちの親は、絶対に大丈夫だよ」

そう思った人もいると思いますが、そう思った人ほど、これを読んでもらいたいと思います。

うちの母親は、ごく普通の70歳のおばあさんで、特に物忘れが多いとか、ボケているわけでもありません。

むしろ、物事には慎重な方ですし、過去にもオレオレ詐欺の電話が2回ほどかかってきいても、すぐに察して、無視して電話を切っています。

だから、僕自身も「うちの親は大丈夫だ」と、ずっと思っていました。

でも、今思えば、最大のミスがここにあったと思います。

もし、この正月に実家に帰って、年老いた両親に会う予定の人がいれば、ぜひ、この詐欺にあった被害者である、うちの母の話をしてもらえればと思います。

(コピーして持っていっても構いません)

そして、この事実をできる限り多くの人に伝えて、うちの母親のような、悲しい思いをする人を、できるだけ減らせることが、少しでも多くの人に発言する立場のある、私の役目ではないかと思った次第です。

ぜひ、ご一読していただければと思います。


25日・午後3時。

実家に1本の電話が入る。

「あ、お母さん、俺だけど」

「どうしたの?」

「電車の中に鞄忘れちゃってさ」

「あら! それは大変!」

「だから今、取引先の携帯借りて電話しているんだよ」

※この時点で、自分の息子(私の兄)と疑う前に

「鞄を忘れた」というエピソードに意識が向いてしまう。

しかも、かかってきた電話が取引先からの電話で「非通知」という事情にも、納得してしまう。

「で、俺、今、携帯ないからさ。もし、忘れ物の連絡が家にかかってきたら、対応してくれない?」

「はいはい、わかりました」

※ここで電話は切れる。

そして、10分後、今度は東京駅の拾得物担当から母に電話が入る。

「えー、東京駅の拾得物担当のものですけども」

「はいはい」

「先ほど、鞄が東京駅で見つかりました」

「それは良かった!」

「で、一応、私の手元に免許証があります。まずは本人のものかどうか確認するために、名前と住所を確認させてください」

「わかりました」

「では、まず息子さんのお名前は?」

「竹内●●です」(兄の名前)

「住所は?」

「●●●です」

「一応、名刺もありますので、会社名も聞かせてください」

「はい。●●会社に勤めています」

「わかりました。これは確かにあなたの息子さんのものですね。では、本人と連絡が取れましたら、東京駅の拾得物の引き取り所まで取りに来るよう伝えてください」

※この時点で、すべて兄の情報を詐欺の相手に母親が伝えることになる。

そして、さらに10分後。
再び兄の名前を語る者から連絡が入る。

「もしもし、駅から連絡あった?」

「あったあった。今、あったよ。東京駅から」

「おー、良かった! 助かったよ。ありがとう! 今から取りに行くよ」

※また、電話が切れる。


そして、さらに10分後。
再びニセ兄から電話が実家に入る。

「お母さん……やばいことになったよ」

「どうしたの?」

「鞄の中を確認したらさ、取引先に渡す予定だった小切手だけが抜き取られているんだよ」

「ええぇ!」


「まずいなぁ……今月中に振り込まなきゃいけないお金なんだよ」

「あらぁら!」

「俺のお金を引き出したいんだけど、ほら、さっき鞄を電車の中に忘れた時に、財布も入っていたから、銀行の口座、全部ストップしちゃったからお金引き出せないんだよ」

「それは困ったわね」

「これがバレたら、俺、会社でちょっとヤバい立場になるんだよ」

「わ、わ、どうしましょう」

「母さん、本当に申し訳ないんだけど……1日だけお金貸してくれるかな?」

「ええ、少しだけならいいわよ」

「少しだけって、どのくらい?」

「どのくらいって、急に言われても……」

「100万円とか、200万円とか、無理?」

「んー、そのくらならなんとか」

「分かった。じゃあ相談してみるから、ちょっと待ってて」

※一度電話が切れて、5分後再びかかってくる。

「母さん、本当にごめん! じゃあ、200万円頼むよ。明日、銀行の口座が動かせるようになったら、すぐ返すからさ」

「わかったわ」

「じゃあ、すぐに取りに行くからさ。用意しておいて」

※そして、また10分後、電話が再びかかってくる。

「ごめん! 急に会議が入って抜け出せなくなった。会社の後輩が取りに行くから、そいつに渡してくれる?」

「わかったわ」

「ただ、小切手をなくしたことは会社で内緒だからさ。後輩は『書類をください』っていうから、そいつに『書類です』といって、封筒にお金を入れて渡してくれよ」

「うん、わかった」

※そして、待ち合わせの近所のスーパーに行くと、サラリーマン風の20代の男が待っている。

「後輩の●●です。はじめまして。書類を受け取りにきました」

「はい、これ」

「確かに受け取りました。では」

※そして、男はテクテクと歩いて駅に向かって消えていった……。

と、こんな感じで、200万円が「あっ」という間に持っていかれました。


その後、兄から連絡がないことがおかしいと思った母は、兄の携帯に「お金は受け取りましたか?」というメールを入れると、兄が「なんのこと?」ということで事件が発覚。

その後、警察に届けを出して、竹内家の実家は葬式のように暗い年末を迎えるようになりました……。


最初に断っておきますが、私の実家はごくごく普通の家庭で、決して裕福なほうではありません。

当然、200万円は大金です。

おそらく、母親が万が一のためにコツコツ貯めたお金で、老後の「いざ」という時のために、とっていた虎の子の貯金だと思います。

それが、自分の息子を守ろうとした善意を利用されて、まんまと騙されたわけですから、おそらく、そのショックは計り知れないものがあります。

しかも、この年末です。

「孫にお年玉もあげられない」

そう言って、母はずっと泣きじゃくってました。

さぞかし、悔しかったと思います。

特に、こんな詐欺の手口に自分が引っかかってしまったことに、そうとう、情けなくなってしまったんだと思います。


で、ここでちょっと冷静に事件を振り返ってみたいと思いますが……。


まず、私が母親と警察から手口を初めて聞いた時、率直な感想としては「すげぇ」の一言でした。

本当によくできている「仕掛け」だと思いました。

ちょっと文章で書いてしまうと、安っぽいベタな詐欺商法としか伝わらないのが悔しいんですが、最初の電話の内容から、最後のお金の受け取りまでの流れは、すべて辻褄があっているし、ストーリーとしては、非常によくできていると思いました。

まさに「臨場感」抜群の演出です。

オレオレ詐欺にあった被害者の家族が言う言葉ではありませんが、人から金を騙し取る仕掛けが、よく研究されています。

おそらく、この一連の流れを完成させるために、たくさんの失敗をして、たくさんの仲間が捕まり、それでも、懲りずに試行錯誤を繰り返して、それで行き着いた、いわば「究極のオレオレ詐欺」であることは、やはりここで認めざるを得ません。


それともうひとつ。

10分おきに電話がかかってくるところも巧妙だと思いました。

相手に「おかしい」と考えさせる隙を与えません。

ずっと緊張感を保たせるために、たえずストーリーを転がせるのは、1回や2回の練習では、演技をし続けるのは難しいと思います。

つまり。

ここが一番、私の認識の甘かったところなんですが、「オレオレ詐欺」をやっている奴らは、バカじゃないっていうことです。

いかに、確実に相手から金をだまし取るかということを突き詰めて、さらに、時代にあわせて、次から次へと「騙し方」というビジネスモデルを進化させていくというのは、決して頭の悪い人たちではできない芸当だと思いました。

「オレオレ詐欺なんてやる奴はバカだ」

と、今まで事件の概要だけを捕らえて、感情だけで決めつけていましたが、その甘い考えが、逆に「私はこんなバカに騙されない」という隙を作ってしまい、結果、そこをつつかれた……というのが、おそらく、今回の一番の敗因のような気がします。

本当に考えれば、考えるほど、腹が立つぐらい、この詐欺システムはよくできています。

例えば、最後の「書類」といってお金を受け取るシーンも、冷静に考えれば凄いですよね。

だって、ここは一番捕まる可能性が高い危険なポジションなんですが、もし、仮にここで捕まったとしても、そいつはおそらく、

「僕は知らない人に頼まれて、書類を受け取るようにと言われただけです」

という言い訳ができるので、見事にトカゲのしっぽ切りができるようになります。

(本当に、そこらへんに歩いている奴を1万円ぐらいで雇った可能性もあるし)

あと、これは警察から聞いたんですが、どうやらオレオレ詐欺の集団は、地元の卒業アルバムとか見ながら電話をかけているそうなんですね。

『昭和30年~50年』ぐらいに生まれた『男性』に的を絞って、電話をかけまくれば、少なくとも「“オレ”と名乗って不自然じゃない相手」の家に対して「年老いた親」が電話に出る確率が高いわけですからね。

がむしゃらに、あてずっぽうに電話をかけていたら、いつまでたっても「騙しやすい相手」にたどり着くことができません。

でも、リストを絞り込めば、最少人数で、効率よくテレアポができるわけですから、このオレオレ詐欺のリーダー格の人は「顧客リスト」の重要性を非常によく理解している人だと思います。

さらに、こんな最悪なビジネスモデルをやっている「スタッフ」に対して、高いモチベーションを維持させている仕組みも凄いと思いました。

おそらく、どうしようもないクズ人間ばかり集めているのにも関わらず、そいつらを教育させて、警察に捕まるリスクまで背負わせて、それでも、このような非社会的なビジネスをやらせ続けられる、このマインドコントロールの方法は、ある程度、社会人経験のある人でなければ、構築できないとも思いました。

まぁ、この「人を騙してお金を奪う」という詐欺のビジネスは、スリル感もあるので、それが病みつきになっているところもあると思いますし、あと、簡単に100万、200万が手に入ってしまう“うまさ”を覚えてしまうと、なかなか人間、その犯罪のようなビジネスを辞めることができないんですけどね……。

で、これはネットに出ていた情報なんですが、母親に対して、マメに連絡を取っている家のほうがオレオレ詐欺にひっかかりやすいそうです。

なぜならば、家に電話がかかってきても不自然じゃないし、そういう家のほうが家族の結束が堅いので、逆にすぐに情報信じてしまって、引っかかりやすいらしいんですね。

あと、オレオレ詐欺の被害にあった8割ぐらいの人が、「自分は引っかからないと思っていた」という自信のあった人たちらしいです。


ここからは、かなり独自の推測になってしまうんですが、僕はたぶん、このオレオレ詐欺は、「しっかりした人」ほど、引っかかりやすいのかなぁと思いました。

「しっかりしている人」は、逆にこういう作られたストーリーに、乗せやすいんだと思います。

逆に「しっかりしていない人」は、予定調和で動けないから、やっぱり、どこかで、この作られたストーリーからはみ出してしまって、詐欺から逃れられるんだと思います。

だから、私は今までオレオレ詐欺の被害者のイメージは、

・孤独な老人
・ひっかかりやすいボケた人

そう思っていましたが、

実際に被害者の家族になって分かったのは、

・家族の絆が強い
・しっかりした人

というのが、実際のオレオレ詐欺の被害者像であり、僕の描いていたイメージと大きく違ったところだったりします。

と、こんな感じで、ほぼ職業病に近いんですが、コンサルタント視点

今回の事件を教訓に、我々が防御策としてやるべきことは、オレオレ詐欺に対して、認識を大きく変えることです。

彼らは、「プロ」の詐欺師なんです。

警察に捕まるリスクを背負っているわけですから、相当の覚悟で、このオレオレ詐欺をやっていると思います。

むしろ、僕らが「商売」をやっている感覚よりも、もっともっと命をかけて、もっともっと真剣にやっている可能性もあるから、逆を考えれば、こんなプロの手にかかってしまったら、素人のおばあさんなんか、一発で騙されるわけです。

おそらく、この振り込め詐欺が、今もなお、社会からなくならないのは、警察に捕まる確率がそれなりに低くて、それでいて、確実に金が取れる詐欺だから、世の中から消滅しないんだと思います。

被害者も、それなりに「しっかりした人」の可能性が高いので、それを考えたら、プライドもあって、被害届けも出していない可能性もありますよね。

そう考えると、世の中のもっとたくさんの人が、この「オレオレ詐欺」に引っかかっていることが考えられます。

「いやいや、お母さんがちょっとオマヌケなだけなんだよ」

おそらく、そう思っている人もいると思います。

事実、私もテレビでオレオレ詐欺の被害にあった人のニュースを見て、「わー、バカな人もいるもんだ」と思っていました。

でも、実際に今回、自分の母親が被害にあって、自分がその一連の詐欺の流れを聞いて、

「こりゃ、ひっかかるよ」と思ったところがあります。

もちろん、自分の母親だから贔屓目に見ているところはあると思いますが、それでも、同じような手口で、引っかかってしまう人が後をたたない現状を考えれば、やはり、多くの人が、オレオレ詐欺に対して、「あいつらは、プロの詐欺集団である」という、認識を持たなければ、いつまでたっても、この被害はなくならないんだと思います。

だから、みなさんも実家に帰ったら、ぜひ、このエピソードを両親に伝えてください。

「こんなバカな詐欺に引っかかっちゃう人がいてさ」

っていう、笑い話でも構いません。

正月、実家でそのような話をして、少しでも、その人の記憶に残って、被害が少なくなることが、唯一の、今の悲しみにくれる母親の心の救いにはなると思います。


最後に。

もし、最悪、自分の母親が被害にあった場合、家族は「心のケア」だけはしっかりしてあげてください。

60歳になってから、「人に騙された」というのは、相当な、自信喪失になります。

悲しいし、悔しいし、恥ずかしいし、夜も眠れない思いをすることになります。

だから、そういう被害にあった人の心の傷を、家族でフォローしていくことも、やはり必要なんだと、改めて被害者になって気づきました。

どちらにせよ、これ以上、被害が拡大しないことを祈るばかりです。

そして。

このオレオレ詐欺に加担した犯罪者さのみなさん。

あんたたちは、プロだし、頭もいいかもしれないけど、ろくな死に方をしないことは確かなので、それだけは覚えておいてください。

人生の貸借対照表は、ちゃんとバランスよくできているんですよ。


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2017-09-10 18:16 : となりのキチさん : コメント : 0 :
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